2026年8月9日、衣料品店「JEANS MATE」やリサイクルショップ「WonderREX」などを運営するREXT株式会社の社内ネットワークがランサムウェアに侵入された。翌日から複数ブランドの店舗で休業や営業時間の変更が相次ぎ、営業を続けた店舗でも決済手段が絞られた。JEANS MATEでは手作業による会計対応が続き、レジに通常より時間を要する状態となった。攻撃を受けたのは一部の社内ネットワークだが、痛みが最も分かりやすい形で表れたのは店頭のレジだった。
8月9日に確認された侵入、翌日から店舗に波及
ジーンズメイトとワンダーレックスがそれぞれ公表したお知らせによると、2026年8月9日(日)、REXTの一部社内ネットワークシステムにおいてランサムウェアによる不正アクセス被害が発生していることが確認された。両社は現在も被害状況の全容解明と原因調査を進めているとしている。
翌8月10日にジーンズメイトが出した告知では、システム障害の影響でWonderREXとWonderGOOは一部店舗を除いて休業し、営業中の店舗も一部エリアのみの対応となっていた。HAPiNSとJEANS MATEについては店舗を開けたまま、手作業による会計対応で乗り切る形が取られ、会計に通常より時間がかかる状態が続いた。
報道によると、REXTは親会社のREXT Holdingsを通じて8月10日に第1報、8月14日に第2報を公表しており、この時点で顧客の個人情報や取引先情報が外部に流出した可能性を完全には否定できないとしている。ScanNetSecurityは8月20日、JEANS MATE店舗での支払いが原則として現金のみになったと報じた。
復旧は進む、ただし店舗ごとにまだら模様
8月17日更新のジーンズメイトの告知では、JEANS MATEの店舗は通常営業に戻り、一部店舗を除いて現金に加えてクレジットカードや各種キャッシュレス決済が利用できる状態まで復旧したと説明されている。ただし利用できる決済方法は店舗によって異なる場合があるとしており、全店が同じ状態に戻ったわけではない。
ワンダーレックスも同じ8月17日付で、WonderREXは全店営業しているものの一部サービスの利用制限が続いており、店舗の状況によってはキャッシュレス決済やポイントサービスが使えない場合があると案内している。買い取り査定やポイント付与のように、業態の中核に近い機能ほど復旧に時間がかかっている様子がうかがえる。
侵入経路や暗号化されたシステムの範囲、攻撃者の特定については、本稿執筆時点で公表されていない。
小売業のランサムウェア被害は「情報漏えい」だけでは測れない
ランサムウェア被害というと、まず流出した個人情報の件数に目が向きがちだ。しかし今回のように店舗を持つ事業者が狙われた場合、被害の実態はそれだけでは測れない。レジが動かなければ商品は売れず、キャッシュレス決済が使えなければ客足そのものが遠のく。手作業の会計でしのいでも、行列と待ち時間という形で顧客体験は確実に削られる。売上の逸失も、店舗スタッフの負荷も、公表資料の数字には出てこない。
もう一つ見落とせないのが、被害が「グループ全体に横展開する」構造だ。今回はREXT1社のネットワークへの侵入が、ブランドの異なる5つの店舗網に同時に影響した。基幹システムやネットワークをグループで共通化していれば、運営効率は上がる一方で、1か所の侵害が全ブランドの営業停止に直結する。統合の利点とリスク集中は表裏一体であり、共通基盤を持つ企業ほど、ネットワークのセグメント分割(機能や拠点ごとの切り離し)や店舗単独でのオフライン営業手順といった「止まった後」の備えが問われる。
対策の優先順位も、この視点で見直す必要がある。侵入を100%防ぐことが難しい以上、侵入されたことをどれだけ早く検知し、被害の範囲を広げる前に食い止められるかが分岐点になる。エンドポイント(レジやPCなどの端末)での挙動検知と、検知後に人が判断して封じ込めるまでの動線を用意できているか。今回の事例は、そうした準備の有無が営業継続の可否に影響しうることを示している。
同じ手口に、自社は備えられていますか?
