SSO(シングルサインオン)とは?必要性や仕組み、メリットを解説

複数の業務システムやクラウドサービスを日常的に利用する現代の企業において、ID・パスワードの管理は大きな負担です。サービスごとにログイン操作をする手間は業務効率を低下させるだけでなく、セキュリティリスクを高める要因にもなります。こうした背景から注目されているのが、SSO(シングルサインオン)です。SSOは、一度の認証で複数のサービス・業務システムにアクセスできる仕組みであり、ユーザーの利便性を向上させ、管理負担の軽減やセキュリティの強化にもつながります。
本記事では、SSOの必要性や仕組み、代表的な認証方式、導入のメリット・デメリットなどを解説するほか、注目のSSO対応サービス「JumpCloud」についても紹介します。
IDaaSについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
SSO(シングルサインオン)とは、一度の認証で複数のサービスにアクセスできる仕組み
SSO(シングルサインオン)とは、ユーザーが一度ログインするだけで、複数のサービスや業務システムをシームレスに利用できる仕組みです。メール、勤怠管理、ドキュメント共有など、日常業務で使うサービスへのログインが簡略化され、利便性と業務効率が向上します。
SSOを利用することで再認証の手間が省け、ID・パスワードの入力ミスや管理の負担も軽減されます。
また、アカウントを一元管理できるようになり、ユーザーごとのアクセス権限やログイン履歴を一括で把握・管理することが可能です。これによって、不正アクセスの早期発見、退職者・異動者のアカウント削除など、人的ミスによる情報漏洩といったセキュリティリスクの軽減にもつながるでしょう。
なお、SSOは業務効率の向上とセキュリティリスクの低減に効果的な仕組みですが、導入方法や連携対象の選定には慎重な検討が求められます。連携するサービスの仕様やセキュリティ要件によっては、SSOの設定が複雑化したり、想定外のアクセス制御ミスが発生したりするリスクがあるため、注意が必要です。
SSO(シングルサインオン)が必要とされる背景
近年、業務で活用されるクラウドサービスやアプリケーションの数は急速に増えています。それに伴い、従業員が複数のシステムにログインする機会が増え、ID・パスワードの管理が複雑化しているのが現状です。これにより、ログインの手間や認証ミス、情報漏洩のリスクが顕在化したことで、SSO(シングルサインオン)の導入が加速しています。SSOは、一度のログインで複数のサービスを利用できるため、サービスごとのログイン作業が不要になり、パスワード入力や再認証の手間が省けます。その結果、従業員が本来の業務に集中できる時間が増え、日々の作業効率が向上するでしょう。
また、アカウントの一元管理が可能になることで、運用の手間が軽減されるだけでなく、ユーザーのアクセス状況を可視化でき、セキュリティ強化にもつながります。リモートワークやハイブリッドワークが広がる中でも、安定したアクセス環境を維持できるため、SSOは現代の企業にとって重要なIT基盤の1つといえます。
SSO(シングルサインオン)の仕組み
SSO(シングルサインオン)は、最初にログインした際の認証情報がSSOサーバーに保持されます。そのため、以降はほかのサービスにアクセスする際も自動的に認証が行われ、毎回ID・パスワードの入力が不要です。
SSOの方法にはいくつかの種類があり、例えば、後述するエージェント方式やリバースプロキシ方式といった技術が使われます。どの方法を採用するかは、導入先のシステム構成やセキュリティの考え方によって変わるため、事前の比較・検討が大切です。SSOは利便性が高い反面、1つの認証情報に依存するため、万一の不正ログインが大きな被害につながる可能性があります。そのため、ワンタイムパスワード(OTP)やMFA(多要素認証)との併用によってセキュリティを補強するケースが増えています。
MFAについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
SSOを導入することで、ユーザーごとのアクセス権限を一元的に管理できるため、サービスごとに個別に設定する必要がなくなり、アクセス制御の効率化が可能です。また、ログイン履歴をまとめて確認できるため、不正なアクセスの兆候を素早く察知したり、内部監査への対応もスムーズに行えたりするようになり、結果としてITガバナンスの強化にもつながります。ただし、導入するツールや連携するシステムの種類・数、認証方式などによってSSOの仕組みは異なるため、自社に適した方法を選ぶことが大切です。
SSO(シングルサインオン)の認証方式
SSO(シングルサインオン)を導入・運用するには、複数の認証方式の中から、自社のIT環境や導入目的に応じた方式を選ぶ必要があります。代表的な認証方式として、「エージェント方式」「リバースプロキシ方式」「代理認証方式」「SAML方式」「透過型方式」の5つが挙げられます。それぞれの概要とメリット・デメリットは下記のとおりです。
主なSSOの認証方式
認証方式 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
エージェント方式 |
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既存のネットワーク構成を大きく変更せずに導入できる | すべての対象システムにエージェントを組み込む必要があるため、未対応のシステムでは使用できない |
リバースプロキシ方式 | クライアント(端末)と各システムの間にリバースプロキシサーバーを設置し、すべての通信を中継させることで認証を実現する | 各業務システムへのエージェント導入や大規模な改修を必要とせず、導入コストを抑えやすい | 通信がプロキシサーバーに集中するため、サーバー側の負荷が高くなりやすく、安定した運用には性能設計が重要 |
代理認証方式 | 各端末に専用のエージェントソフトを導入することで、ログイン画面を検知した際に、あらかじめ登録されたID・パスワードを自動入力する | 既存システムに手を加える必要がなく、古いレガシーシステムにも対応できる |
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SAML(Security Assertion Markup Language)方式 | IdP(認証プロバイダー)とクラウドサービスの間で、「チケット」と呼ばれる一時的な認証情報を交換し、SSO(シングルサインオン)を実現する | SAMLに対応したサービスであれば、クラウド側の設定だけでSSOを実装できるなど、導入しやすく拡張性にも優れている | 使用するサービスがSAMLに対応している必要がある |
透過型方式 | 端末とシステム間の通信を監視し、必要な認証情報を自動的に送信する | サーバー側の設定変更やエージェントの導入が不要なため、専用の開発・システム改修が必要なく、既存のネットワーク構成とアプリケーションを変更せずに導入できる | 比較的新しい方式であるため、導入前に対象システムとの対応状況を確認することが重要 |
SSO(シングルサインオン)の3つのメリット
SSO(シングルサインオン)は、ログイン操作を簡略化するだけでなく、業務効率やセキュリティ面でも大きなメリットがあります。ここでは、以下のSSO導入によって得られる主な3つのメリットを紹介します。
- ユーザーの利便性が向上する
- セキュリティ強化につながる
- 管理業務の効率化に役立つ
ユーザーの利便性が向上する
SSO(シングルサインオン)のメリットは、ユーザーの利便性が向上する点です。
SSOを導入すると、ユーザーは複数のサービスに一度のログインでアクセスできるようになります。ログイン作業が減ることで、業務の中断が少なくなり、スムーズな作業が可能です。ID・パスワードの管理負担も軽減され、入力ミスやパスワード忘れによるログイントラブルのリスクも低減されます。ただし、利便性が向上する一方、不正アクセスが発生した場合の影響は大きくなるため、認証の範囲や仕組みは慎重に設計する必要があります。
セキュリティ強化のオプションとなる
セキュリティ強化のオプションになることも、SSO(シングルサインオン)のメリットの1つです。
SSOは、ユーザーの認証情報を一元管理できるため、パスワードの使い回しや設定ミスといった人的なミスを防ぎやすくなります。こうしたミスが原因となるセキュリティインシデントを未然に防ぐことで、結果的に企業全体としてのセキュリティレベル向上につながる可能性があるでしょう。また、MFAと組み合わせることで、SSOは不正アクセス対策としても強力な手段となるほか、アクセス状況の監視や異常検知といった運用面の対策とも連携しやすくなります。
管理業務の効率化に役立つ
SSO(シングルサインオン)のメリットには、管理業務の効率化に役立つことも挙げられます。
SSOによって認証情報を一元管理できるようになると、アカウントの発行・削除や権限設定といった操作を集中して行えるようになり、IT管理者の負荷が軽減されます。その結果、アカウントの削除漏れや権限設定ミスなどの人的ミスが減り、対応の正確性、スピードの向上が期待できるでしょう。ただし、効率化を実現するためには、アカウント管理のルールや権限設定方針などを含む運用設計と、トラブル対応・ユーザー支援を想定したサポート体制の整備が重要です。
SSO(シングルサインオン)の2つのデメリット
SSO(シングルサインオン)は、利便性や効率性に優れた仕組みですが、導入・運用には一定のデメリットが伴います。ここでは、2つの代表的なデメリットについて見ていきましょう。
- 情報漏洩リスクがある
- システム停止の影響が大きい
情報漏洩リスクがある
SSO(シングルサインオン)のデメリットの1つは、情報漏洩リスクがある点です。
SSOでは1つの認証情報で複数サービスにアクセスできるため、その認証情報が漏洩すると、被害が多くのサービスに及ぶ可能性があります。このリスクを低減させるには、アクセス制御の強化やログの監視体制の整備が重要です。また、従業員へのセキュリティ教育やパスワード管理のルールの徹底も欠かせません。
システム停止の影響が大きい
SSO(シングルサインオン)のデメリットには、システム停止時の影響が大きいことも挙げられます。
SSOは全社の認証を一元的に管理しているため、SSO連携部分が停止すると、社内のあらゆる業務システムやクラウドサービスにログインできなくなるおそれがあります。結果として、業務が全面的にストップし、生産性やサービス提供に支障をきたす可能性もあるでしょう。その影響を抑えるには、冗長構成(システムを二重化・多重化して、1つが故障してももう一方で稼働を継続できる仕組み)やバックアップの整備が大切です。合わせて、障害発生時の対応手順や復旧フローを事前に整備しておくことが求められます。
SSO(シングルサインオン)を導入する際のポイント
SSO(シングルサインオン)の導入を成功させるには、システムの選定から運用体制の整備まで、複数の観点からの準備が大切です。ここでは、導入時に押さえておきたい以下の2つのポイントを紹介します。なお、それぞれの詳細や実装ノウハウについては、製品選定時のサポート、導入支援サービスを活用するのがおすすめです。
- 自社の環境に適しているか確認する
- 導入後のサポート体制とコストを事前に確認する
自社の環境に適しているか確認する
SSO(シングルサインオン)システムは多数の製品が存在するため、自社のIT環境に適したものを選ぶことが大切です。
オンプレミス環境かクラウド中心か、既存システムとの連携性など、自社の要件を正確に把握した上で検討しましょう。また、導入後の運用負担を軽減するには、UIの使いやすさや設定の柔軟性も確認が必要な要素です。
導入後のサポート体制とコストを事前に確認する
導入後のサポート体制とコストを事前に確認することも、SSO(シングルサインオン)を導入する際のポイントの1つです。
SSO導入後にシステムを安定して運用するためには、ベンダーのサポート体制や障害時の迅速な対応と復旧能力が重要な選定基準となります。トラブル発生時の対応スピードや、問い合わせ対応への柔軟かつ迅速な対応ができるかどうかを、導入前に確認しましょう。また、初期費用、月額費用などのコスト管理も欠かせません。
注目されるSSO(シングルサインオン)サービス「JumpCloud」
現在、さまざまなSSO(シングルサインオン)対応サービスが提供されていますが、その中でも注目を集めているのが「JumpCloud」です。「JumpCloud」は、クラウドベースでID管理、デバイス管理、認証機能を統合的に提供するIDaaS型プラットフォームであり、SSOにも対応しています。
「JumpCloud」の特長は、SSO、MFA(多要素認証)、ディレクトリーサービス、デバイス管理などを、一元管理できる点です。複数のツールや管理画面を使い分ける必要がなくなり、端末の設定・変更・監視といった運用業務を効率化でき、IT管理者の運用負荷を軽減できます。
さらに、「JumpCloud」はSAML認証に対応しており、多くのクラウドサービスとスムーズに連携できます。VPNを使用せずに、安全なリモートアクセス環境を構築できる点も、リモートワーク導入企業にとって大きな魅力です。オンプレミス環境にLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)ベースの認証を提供することで、サーバーやアプリケーションへのアクセス管理も行えます。このように、「JumpCloud」は高い柔軟性とセキュリティを備えたSSOソリューションとして、あらゆる業種・規模の企業にとって有力な導入候補です。
SSO(シングルサインオン)を導入して安全で効率的な環境を整えよう
SSO(シングルサインオン)は、業務の利便性を高めるだけでなく、セキュリティ強化や管理効率の向上にも役立つ認証基盤です。導入にあたっては、自社の業務環境に合ったシステムを選び、段階的に運用体制を整えることがポイントになります。近年は、「JumpCloud」のようなIDaaS型SSOサービスも登場しており、クラウド活用を前提とした柔軟な認証基盤を構築しやすくなっています。
なお、「自社に適したSSOの導入方法を知りたい」「製品比較だけでは判断が難しい」とお感じの方は、ITインフラやID管理に精通した専門家への相談をしながら、最適な導入方針を検討してみましょう。
SSOの仕組みとメリット・デメリットを正しく理解し、自社に最適な運用体制を整備することが、企業の信頼性と競争力を高める第一歩となります。