企業の情報システム部門では、高度化するサイバー攻撃に日々対処しなければなりません。従来のアンチウイルスやファイアウォールだけでは、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなど新手の攻撃手法を完全に防ぎ切るのは困難です。そこで注目されているのがATP(Advanced Threat Protection)という高度な脅威対策の手法です。これは、複数のテクノロジーや分析手段を組み合わせることで、未知の脅威や高度な攻撃からシステムやデータを守り、万が一侵入されても被害を最小限に抑えられる包括的な防御の枠組みを指します。この記事では、ATPの概要とその仕組み、そしてゼロデイ攻撃やAPT(高度持続的脅威)といった手口にどのように対応できるのかを解説し、導入によるメリットや検討すべきポイントを整理してみます。

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ATP(Advanced Threat Protection)とは

ATPとは、高度化するサイバー攻撃に対して、単一のソリューションだけでなく複数の防御レイヤーを統合することで、攻撃の検知や分析、封じ込めを総合的に行う仕組みを指します。従来のマルウェア対策ソフトやファイアウォールは、既知のシグネチャやルールベースでブロックするのが主流でしたが、近年の攻撃はファイルレスマルウェアやゼロデイ脆弱性を突く形で、こうした従来型の対策をすり抜けるケースが増えています。そこでATPでは、AIや機械学習、サンドボックスなどを活用し、攻撃者が使うあらゆる手法を多角的に捕捉し、リアルタイムで対処するのが大きな特徴です。

従来のセキュリティとの違い

従来のセキュリティ対策は、シグネチャに基づくウイルス検知やネットワークレベルでのパケットフィルタリングが中心でした。これは既知の攻撃パターンに対しては有効ですが、攻撃者が新しい手口を開発した場合や、標的型攻撃のように特定企業に合わせて手法を変えてくるケースには対応が難しくなります。一方でATPは、ファイルの振る舞いや通信傾向を常時監視・分析し、未知の脅威を推定できるのが利点です。さらに、万が一侵入を許してしまった場合でも、被害範囲の特定や封じ込め、復旧を素早く実行できるようインシデントレスポンスの仕組みが組み込まれているため、セキュリティ運用全体を強化することが可能となります。

高度な脅威の現状と脅威例

●ゼロデイ攻撃や標的型ランサムウェア

ゼロデイ攻撃は、ソフトウェアの未修正の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を突く攻撃を指し、開発元やセキュリティベンダーが対策方法をまだ把握していないため、既存のシグネチャに頼る従来型対策では簡単に突破される可能性があります。特に標的型ランサムウェアが企業を狙うケースでは、脆弱性を介してネットワーク内に侵入し、重要ファイルを暗号化すると同時にバックアップデータまで攻撃者が掌握するなど巧妙な手段を使います。こうした攻撃手法は、従来のウイルス対策だけでは十分に防げず、一度感染すると多大な業務停止や金銭的損失に発展するリスクが高まります。

●ファイルレスマルウェアやAPT(高度持続的脅威)

ファイルレスマルウェアは、Windowsの正規コマンドやメモリ上のデータ実行を悪用して侵入を図るため、従来型のウイルス対策ソフトでは検知が難しくなります。OSの機能を使って不審なスクリプトを動かしたり、標準ポートを利用してデータを抜き取ったりするため、ログやネットワーク監視の仕組みがなければ見逃してしまう恐れが大きいのです。また、APT(Advanced Persistent Threat)は、長期的に潜伏しながら機密情報を狙う攻撃手法で、特定の企業や組織をターゲットに入念な情報収集と脆弱性探索が行われます。APTは多段階の攻撃フローを経てデータを盗み出すため、従来の単一防御では検知しづらい点が最大の脅威といえます。

ATPの主な仕組みと特徴

🟢マルチレイヤー防御とサンドボックス

ATPではネットワーク層やエンドポイント層など、複数のレイヤーで防御態勢を強化し、いずれかの防御が突破されても他のレイヤーが検知・遮断を行う多層防御を基本とします。加えて、不審なファイルを専用のサンドボックス(仮想環境)で実行して振る舞いを分析し、ゼロデイ脆弱性を狙う攻撃やファイルレスマルウェアなどを早期に発見することができます。サンドボックス内で疑わしいファイルを実際に動かしてみることで、外部への通信やレジストリ変更といったマルウェア特有の挙動を検知する仕組みが効果を発揮します。

🟢AI・機械学習によるリアルタイム検知

今日のATPソリューションではAIや機械学習技術を活用したリアルタイム検知が重要な役割を果たします。エンドポイントでのファイル操作やメモリアクセス、プロセス生成などのイベントを常時分析し、通常の業務と明らかに異なる動きが見られた場合には即座にアラートを上げたり、自動的に封じ込めを行ったりします。大量のデータを高速に処理するAIは、新種や亜種のマルウェアにも対応しやすく、ネットワーク全体での脅威情報の共有によって検知精度をさらに向上させることができます。

🟢インシデントレスポンスと可視化

ATPの大きな特徴のひとつとして、インシデントレスポンスの支援機能が挙げられます。もしマルウェアに感染したり不審な活動を検知したりした場合に、ATPソリューションは攻撃の流れや影響範囲を可視化し、封じ込めや駆除のために必要な対処を提案または自動実行します。ログやアラート情報を統合した管理画面から、どの端末でどのような経路を通じて攻撃が進行し、どのアカウントやデータが狙われたのかが即座に把握できるのです。これによりセキュリティ担当者は正確な被害評価と影響範囲の特定を行い、再発防止策を迅速に立案できます。

ATP導入のメリットと検討ポイント

✅リスク低減と迅速な復旧

ゼロデイ攻撃や標的型ランサムウェアなど、従来の防御策が苦手としてきた高度な脅威に対して、ATPは多層的な検知と分析を通じてリスクを大きく低減します。従来型のソリューションでは検知までに数日や数週間かかる可能性もありますが、ATPではリアルタイムでの振る舞い分析とサンドボックス解析により、攻撃が起こった瞬間に封じ込めが可能です。また、万が一侵入を許した場合にも、詳細なログや自動レポート機能が被害範囲の特定と復旧をスムーズにサポートし、長期的な業務停止や大規模な情報漏えいを防止します。

✅SOCやSIEMとの連携

ATPはあくまでエンドポイントやネットワークの振る舞いを高度に解析する仕組みであり、企業としてはSOC(Security Operation Center)やSIEM(Security Information and Event Management)と連携して全体のセキュリティオペレーションを最適化することが重要です。ATPからのアラートをSIEMに集約し、クロスデータで相関分析を行うことで、高度な攻撃者の動きを俯瞰的に捉えられます。多拠点環境やクラウドサービス、オンプレミスのハイブリッド運用など複雑な環境でも、情報を一元管理する仕組みを作ることで、インシデント対応の効率を格段に向上できます。

✅運用コスト・人材面の考慮

ATPを導入しても、アラート対応やセキュリティポリシーの更新などに人手がかかる場合もあります。特にAIや機械学習を活用するソリューションでは、誤検知を減らすためのチューニングや、無視してはいけない重大アラートを確実に拾うための運用ノウハウが必要です。社内にセキュリティ専門家がいない場合は、外部の管理サービスやコンサルティングを利用する選択肢も検討すべきでしょう。ライセンスコストや運用コストが増加する可能性もあるため、ROIを考慮しながら導入計画を進めることが大切です。

さいごに

ATP(Advanced Threat Protection)は、ゼロデイ攻撃や標的型ランサムウェアなど高度なサイバー脅威に対し、多層的な検知と分析を通じて早期封じ込めと迅速な復旧を実現するアプローチです。サンドボックス解析やAI・機械学習を活用したリアルタイム検知、インシデントレスポンス支援など、従来のアンチウイルスやファイアウォールだけでは補いきれない機能を包括的に提供することで、企業のセキュリティレベルを飛躍的に向上させます。とはいえ導入に際しては、SOCやSIEMとの連携、運用体制の確立、人材育成や外部リソースの活用といったポイントをしっかりと検討しなければなりません。日々進化する高度な脅威に対抗するため、ATPを中核としたセキュリティ戦略を整え、企業の重要資産やサービスを堅牢に守る態勢を築くことが、今後ますます求められていくでしょう。

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未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入

サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。

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セキュリティについて従業員教育を行う

サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。

セキュリティ対策のガイドラインを策定する

効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。

また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。

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