Excelは世界中のビジネス現場で当たり前のように利用されているソフトウェアですが、使われる頻度が高いほど、攻撃者にとっては絶好のターゲットになり得ます。特に企業の情報システム部門にとっては、不審なExcelファイルを介したマルウェア感染や情報漏えいなどのリスクが見逃せません。たとえば、日常業務のなかで取引先とのやり取りに添付されたExcelファイルを開くとき、悪意あるマクロが仕込まれている可能性があるなど、知らないうちにサイバー攻撃の餌食となる危険性があります。本記事では、Excelファイルを悪用したサイバー攻撃の概要や、具体的な仕組み、企業に与えるリスクについて解説します。
Excelファイルを悪用したサイバー攻撃
なぜExcelが狙われるのか
Excelがサイバー攻撃の格好の標的となる理由のひとつは、その圧倒的なユーザー数とビジネス現場への浸透度にあります。企業の多くは業務レポートや数値計算、データ集計にExcelを使っており、電子メールやクラウドストレージを通じてExcelファイルをやり取りする機会が多く存在します。攻撃者はそうしたシチュエーションを悪用し、巧妙に偽装した添付ファイルやリンクを通じて被害を拡大させるのです。
また、Excelは高機能であるがゆえに、マクロや外部参照など、セキュリティ上の盲点となる機能が豊富に備わっています。ユーザーが十分な知識を持たないまま便利な機能を無防備に使っていると、いつの間にか攻撃者に「入り口」を提供してしまう結果になりかねません。
主な攻撃手法の種類
Excelファイルを悪用した攻撃としては、まずマクロ(VBA)を利用した不正コードの実行が挙げられます。攻撃者はExcelファイル内にマクロを仕込み、ユーザーがファイルを開いてマクロを有効化すると、バックドアを設置したり、ランサムウェアをダウンロードさせたりといった攻撃を行います。さらに、最近ではExcel 4.0マクロと呼ばれるレガシー機能が再注目されており、従来のウイルス対策ソフトで検知されにくい手口として悪用されているケースがあります。
加えて、外部参照やリンク機能を使ったフィッシングも大きな脅威となっています。たとえば、Excelファイル内に設定されたリンク先をクリックしたユーザーが、実際にはマルウェアをホストするサイトに誘導されるといった具合です。こうした手口はメール本文だけでなく、Excel自体が偽装のトリガーとなるため、被害者が警戒を怠りやすいという特徴があります。
Excelを用いたサイバー攻撃の仕組み
●フィッシングメールと悪意ある添付
多くのExcelを悪用したサイバー攻撃は、フィッシングメールによって送り込まれるケースが一般的です。攻撃者は大企業や取引先、あるいは社内の一部門を装い、「見積書」や「請求書」など業務でよく使われる名目のファイルを添付してきます。メール本文には「緊急対応が必要」「至急ご確認ください」などの文言が記載され、相手が疑問を持つ時間を与えないよう巧妙に仕組まれています。ユーザーが安心して添付ファイルを開いた瞬間、Excelのマクロが動作し、不正なプログラムがダウンロード・実行される恐れがあります。
●マクロ有効化によるマルウェア感染
Officeアプリの基本設定では、マクロの自動実行が無効になっているケースが多いものの、「マクロを有効にしてください」というメッセージが表示された際に、ユーザーが深く考えずに許可してしまうことがあります。攻撃者は「マクロを有効にしなければファイルが正しく見られません」などと訴求し、あたかも正当な操作であるかのように装うのが特徴です。いったんマクロが有効化されると、キーロガーや情報窃取型マルウェアなどがシステムに組み込まれ、IDやパスワード、顧客データなどを外部へ送信してしまう危険性があります。
リスクと影響範囲
🔴業務停止や復旧コストの増大
Excelファイルを通じてマルウェアに感染した場合、企業は業務停止や復旧作業に多大な労力を要する可能性があります。特にランサムウェアとの連携攻撃では、暗号化されたファイルが社内サーバーやクラウドストレージにも波及し、業務が全面的にストップするリスクが高まります。復旧には専門業者の手配やシステムの再構築が必要となり、そのコストや時間的損失は計り知れません。
🔴信用失墜と法的リスク
マルウェア感染によって顧客情報や企業秘密が漏えいした場合、そのダメージは単なる金銭的被害にとどまりません。取引先や顧客からの信用が失われ、企業としてのブランドイメージが大きく傷つく結果を招く恐れがあります。さらに、漏えいの状況によっては個人情報保護法や不正競争防止法などの法令に抵触し、行政処分や損害賠償といった法的リスクに直面する可能性も否定できません。
さいごに
Excelファイルを悪用したサイバー攻撃は、ビジネスの現場で頻繁に利用されるツールを逆手に取った巧妙な手口です。マクロや外部リンクなどExcelの便利な機能が、そのまま攻撃の入り口として使われるケースが増えているため、企業の情報システム部門としては警戒を強める必要があります。特にフィッシングメールを使って社内に侵入し、マクロの有効化によってマルウェアを展開する流れは一般社員が気づきにくく、予防措置を講じていない組織ほど被害が深刻化しやすいといえます。
こうした脅威に対しては、常日頃からメールの送信元や添付ファイルの真偽を確認する習慣を促すとともに、Officeマクロの自動実行を制限するポリシーやセキュリティツールの導入を検討することが重要です。さらに、従業員に対してサイバー攻撃の事例や最新の手口を定期的に共有し、ファイルを開く際の注意点を徹底させることで、ファイル受け渡しをめぐるリスクを最小限に抑えることが可能になるでしょう。企業としては、こうした多層的な防御策を講じることでExcelファイルに潜むサイバー攻撃から情報資産をしっかり守ることが求められます。
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✅未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入
サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。
✅セキュリティについて従業員教育を行う
サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。
✅セキュリティ対策のガイドラインを策定する
効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。
また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。
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