企業の情報システム部門に所属していると、社員から業務の利便性を高めるためにブラウザ拡張機能の使用を求められることがあるかもしれません。ブラウザ拡張機能は、広告をブロックして快適な環境を作ったり、パスワードを一括管理したりと、多くのメリットをもたらす一方で、セキュリティ上のリスクを無視することはできません。
特に近年は、不審な拡張機能が潜在的にマルウェアを含んでいたり、利用者の個人情報や企業機密を収集したりと、悪意のある動きが問題視されています。本記事では、ブラウザ拡張機能の概要やメリットに加え、その裏側に潜むリスクについて解説し、さらに企業としてどのように対策を講じるべきか、具体的なポイントをご紹介します。
ブラウザ拡張機能とは
ブラウザ拡張機能は、Google ChromeやMozilla Firefox、Microsoft Edgeなどのブラウザに追加できる小さなプログラムです。インストールすることで、広告を非表示にしたり、自動翻訳機能を付与したりと、ブラウザの基本機能を拡張して利便性を向上させることができます。
例えば、Web会議ツールと連携して画面共有を簡単に行うための拡張機能や、タスク管理をスムーズにするための拡張機能など、さまざまなジャンルのものが公開されています。企業の業務効率化に役立つ機能も多く、うまく活用すれば大きなメリットを得られるでしょう。
代表的な機能とメリット
ブラウザ拡張機能には、多様な用途が存在します。たとえば、YouTubeなどの動画サイトで不要な広告をブロックするものや、複数のSNSアカウントを一元的に管理できるもの、ビジネスで使えるメモ機能やタスク管理ツール、パスワード管理ソフトとの連携機能などがあります。
こうした拡張機能を導入することで、ブラウザを使った作業の効率が高まり、時間を節約できます。さらには、視覚的なインターフェースをカスタマイズできる拡張機能もあり、デザイン面での快適さを追求するユーザーにとっても魅力的です。ただし、その利便性の裏には常にセキュリティリスクが潜んでいることを忘れてはなりません。
ブラウザ拡張機能に潜むリスク
不正拡張機能による情報漏えい
近年、ブラウザ拡張機能を悪用したサイバー攻撃の被害報告が相次いでいます。特に問題となるのが、不正拡張機能を通じたマルウェアの配布や、フィッシング詐欺の実行です。一見便利そうに見える拡張機能が実は悪意のあるコードを含んでいて、インストールした途端、ユーザーのブラウザ履歴やフォームに入力した情報が外部に送信されるという事例もあります。
企業がこうした不正拡張機能をインストールしてしまった場合、ログイン認証情報や顧客データ、プロジェクトの機密情報などが外部に漏えいするリスクが高まります。これは企業にとって取り返しのつかない損害となり得るため、拡張機能の導入には慎重な審査が必要です。
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過剰権限とプライバシー侵害
ブラウザ拡張機能をインストールするとき、拡張機能が要求するアクセス権限を確認する画面が表示されることがあります。例えば「すべてのWebサイトのデータを読み取る・書き換える」などと表示されるケースが代表的です。
拡張機能によっては、ユーザーのあらゆるブラウジングデータを取得できるほど強力な権限を要求するものがあり、これはプライバシー侵害だけでなく、企業活動への重大なリスクにつながります。権限が過剰な拡張機能をインストールすれば、それだけ外部に情報が流出する余地が大きくなり、後々トラブルが発生したときの影響範囲も広がってしまうのです。
企業環境での注意点と対策
🟢セキュリティガイドラインの策定
企業において、拡張機能の導入・利用を自由に任せていると、思わぬリスクを招く恐れがあります。そのため、まずは社内でセキュリティガイドラインを整備し、どのような拡張機能を使用してもいいのか、どのような審査プロセスを経る必要があるのかを明確にすることが重要です。
具体的には、エンドユーザーが勝手に拡張機能を追加できないように制限をかける、推奨拡張機能リストを作成して定期的に見直す、セキュリティ面で特に疑わしい拡張機能を監視し、早期に検出できる仕組みを整えるなどの取り組みが考えられます。このような対策を講じることで、従業員や利用者が安全に拡張機能を活用できる環境を作ることができます。
🟢管理者によるアクセス制御と監視
ブラウザ拡張機能が大きな権限を持ち得ることを考慮すると、システム管理者が管理コンソールなどを利用して拡張機能のインストールを制限・監視することが不可欠です。たとえば、企業が導入するG SuiteやMicrosoft 365などの管理ツールでは、社内端末に導入できる拡張機能を特定のものだけに限定するポリシーを設定できる場合があります。
また、どのユーザーがどんな拡張機能をいつ導入したのか、ログを取得しておくことはトラブルシューティングやセキュリティインシデントの調査に有効です。万が一、不審な挙動が見られた場合には早期に拡張機能を無効化・削除するなどの迅速な対応が求められます。こうした監視体制を整えておくことで、拡張機能を悪用したサイバー攻撃のリスクを最小化できるでしょう。
安全にブラウザ拡張機能を使うポイント
✅信頼性の高い開発元・プラットフォームの選択
ブラウザ拡張機能を導入する際には、まず開発元や配布プラットフォームの信頼性を確認することが基本です。たとえばGoogle ChromeウェブストアやMozillaアドオン公式サイトなど、公式のマーケットプレイスを利用することで、一定レベルの審査を経た拡張機能を選ぶことができます。
さらに、拡張機能のレビューや評価、開発元の情報をしっかりとチェックし、不自然に高評価のみが並んでいないか、最近の更新履歴がきちんと残っているかなどを確認しましょう。公開から日にちが経っている拡張機能の場合、すでに多くのユーザーがインストールしているケースも多いので、実際の使用感や問題点が共有されている可能性があります。
✅権限設定と定期的な見直し
拡張機能が要求する権限は、インストール前に必ず確認し、なぜその権限が必要なのかを検討することが大切です。過剰な権限を要求する拡張機能は、悪意のある目的に転用されるリスクが高いと言えます。どうしても必要な機能であれば、権限の妥当性を評価したうえで導入するようにしましょう。
また、一度インストールした拡張機能も、定期的に利用状況を確認し、不要になったものはアンインストールしておくことが望ましいです。拡張機能が裏で何をしているか、ユーザーが常に把握できるわけではありません。少しでも不審な挙動や意図しない動きが見られた場合には、すぐにオフにするか削除し、リスクを軽減することが重要です。
さいごに
ブラウザ拡張機能は、業務や日常のブラウジングにおいて大きなメリットをもたらしてくれます。しかし、不審な拡張機能をインストールすると情報漏えいやプライバシー侵害、さらには企業全体のセキュリティを脅かすリスクに発展する可能性もあります。特に過剰な権限を要求する拡張機能は警戒が必要であり、企業としてはセキュリティガイドラインの策定や導入制限、監視体制の強化など、多面的なアプローチが求められます。
最終的には、ブラウザ拡張機能を“正しく使う”意識と仕組みづくりが不可欠です。公認マーケットや信頼できる開発元の製品を利用し、権限設定を適切に管理することで、ブラウザ拡張機能のメリットを享受しながら、セキュリティリスクを最小限に抑えることが可能になります。企業の情報システム部門としては、こうした対策を徹底することで、社員の利便性とセキュリティのバランスをうまく保つ環境を構築していきましょう。
サイバー攻撃対策をするなら
✅未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入
サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。
✅セキュリティについて従業員教育を行う
サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。
✅セキュリティ対策のガイドラインを策定する
効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。
また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。
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