2024年4月、セキュリティソフトウェア大手のCrowdStrikeが提供するFalcon製品のアップデートにより、多くのWindows PCがブルースクリーンを表示して起動不能に陥り、世界中のWindows PCユーザーを驚かせる出来事が起こりました。本記事では、このCrowdStrike事案を踏まえつつ、ブルースクリーンの概要、原因、そして対処法について詳しく解説していきます。
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ブルースクリーンとは
ブルースクリーン、正式名称を「ブルースクリーン・オブ・デス(Blue Screen of Death、略称BSOD)」といいます。これは、Windows オペレーティングシステムにおいて、重大なシステムエラーが発生した際に表示される青い画面のことを指します。この画面が表示されると、コンピューターは強制的に停止し、再起動を余儀なくされます。
ブルースクリーンが発生すると、画面全体が青色に変わりエラーメッセージやエラーコードが表示されます。これは、システムが安全に動作できない状態に陥ったことを示すシグナルであり、データの破損や損失を防ぐための緊急停止措置と言えます。ユーザーにとっては突然の作業中断を意味するため、非常に厄介な現象です。
特に、保存していない作業データが失われる可能性があることから、多くの人々に恐れられています。しかし、ブルースクリーンは単なる不具合ではなく、重大な問題からシステムとデータを保護するためのWindows OSの重要な機能の一つでもあるのです。
ブルースクリーンの原因とは
ブルースクリーンの発生原因は多岐にわたりますが、大きく分けてハードウェアの問題とソフトウェアの問題に分類できます。
ハードウェアに関する原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- メモリ(RAM)の不具合:不良なメモリモジュールや、メモリの互換性の問題。
- ハードディスクやSSDの障害:物理的な損傷や論理的なエラー。
- CPUの過熱:冷却システムの不具合や、過度のオーバークロック。
- 電源ユニットの問題:安定した電力供給ができない状態。
- グラフィックカードの不具合:ドライバーの問題や、ハードウェアの故障。
一方、ソフトウェアに関する原因には次のようなものがあります。
- ドライバーの互換性問題:古いドライバーや、不適切なドライバーの使用。
- ウイルスやマルウェアの感染:システムの重要な部分を破壊する悪意のあるソフトウェア。
- Windows更新プログラムの不具合:最新のアップデートによる予期せぬ問題。
- ソフトウェア間の競合:複数のプログラムが同じリソースにアクセスしようとする状況。
- システムファイルの破損:重要なシステムファイルが何らかの理由で壊れてしまった場合。
2024年4月に発生したCrowdStrikeのFalcon製品によるブルースクリーン問題は、ソフトウェアの更新による不具合の典型例と言えるでしょう。このケースでは、セキュリティソフトウェアのアップデートが、Windowsのカーネルレベルで問題を引き起こしシステム全体を不安定にしました。
ブルースクリーンのエラーコードの意味
ブルースクリーンが発生すると、画面上に表示されるエラーコードは、問題の特定と解決に重要な手がかりを提供します。これらのコードは、発生した問題の種類や原因を示す重要な情報源です。以下に、よく見られるエラーコードとその意味を解説します。
- MEMORY_MANAGEMENT (0x0000001A):
このエラーは、メモリ管理に関する問題を示します。多くの場合、RAMの不具合や互換性の問題が原因です。 - SYSTEM_SERVICE_EXCEPTION (0x0000003B):
システムサービスで例外が発生したことを示します。ドライバーの問題や、システムファイルの破損が原因である可能性が高いです。 - IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL (0x0000000A):
カーネルモードのドライバーやプログラムが、不適切なメモリアドレスにアクセスしようとした際に発生します。 - PAGE_FAULT_IN_NONPAGED_AREA (0x00000050):
必要なデータがメモリ上に見つからない場合に発生します。ハードウェアの不具合やドライバーの問題が原因の可能性があります。 - KERNEL_DATA_INPAGE_ERROR (0x0000007A):
カーネルが必要なデータをメモリにロードできない場合に発生します。ハードディスクの不具合やファイルシステムの破損が考えられます。
これらのエラーコードは、問題の大まかな原因を示すものの、具体的な解決策を直接指し示すものではありません。しかし、これらのコードを理解することで、トラブルシューティングの方向性を絞り込むことができます。
ブルースクリーンの対処法
BIOSの設定を見直す・初期化を行う
BIOSの設定を見直すことは、ブルースクリーン問題の解決に効果的な方法の一つです。BIOSは、コンピューターの基本的なハードウェア設定を管理する重要なシステムであり、不適切な設定がブルースクリーンの原因となることがあります。
- コンピューターを再起動し、起動時に表示される画面で指定のキー(多くの場合、Del、F2、F10など)を押してBIOS設定画面に入ります。
- BIOSの設定項目を確認し、特に以下の点に注意します:
- メモリの設定(速度や電圧)
- CPUの設定(クロック周波数やオーバークロック設定)
- ディスクコントローラーのモード(AHCI、IDE、RAIDなど)
- 不適切な設定や不安定な設定を見つけた場合は、安全な値に戻します。
- 問題が解決しない場合は、BIOSの初期化(リセット)を検討します。多くのBIOSには「Load Optimized Defaults」や「Reset to Default」などのオプションがあります。
- 設定を変更したら、必ず「Save & Exit」を選択して変更を保存し、システムを再起動します。
BIOSの設定変更は、システムの安定性に直接影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。不安な場合は、専門家に相談することをお勧めします。
システムの復元を実行する
システムの復元は、Windowsに組み込まれた強力なトラブルシューティングツールです。これを使用することで、ブルースクリーンの原因となった可能性のある最近の変更を元に戻すことができます。システムの復元を実行する手順は以下の通りです。
- スタートメニューを開き、「システムの復元」と検索します。
- 「システムのプロパティを作成して復元する」を選択します。
- 「システムの復元」タブで「システムの復元」ボタンをクリックします。
- 「推奨される復元」を選択するか、別の復元ポイントを選択します。
- 復元ポイントを選択したら、「次へ」をクリックし、画面の指示に従って復元プロセスを完了します。
システムの復元は、最近インストールしたプログラムや更新プログラムを削除する可能性があるため、重要なデータのバックアップを取ってから実行することをお勧めします。
周辺機器を取り外し再起動
周辺機器の不具合や互換性の問題がブルースクリーンの原因となっていることがあります。このような場合、周辺機器を一時的に取り外して再起動することで、問題の原因を特定できる可能性があります。
- コンピューターの電源を完全に切ります。
- 外付けハードディスク、プリンター、スキャナー、USBメモリなど、すべての外部周辺機器を取り外します。
- キーボードとマウス以外のUSBデバイスをすべて取り外します。
- コンピューターの電源を入れ、正常に起動するかどうかを確認します。
- 正常に起動した場合は、周辺機器を一つずつ接続し、どの機器を接続した時点でブルースクリーンが発生するかを確認します。
この方法で問題の原因となる周辺機器を特定できた場合は、その機器のドライバーを更新するか、必要に応じて機器自体を交換することを検討してください。
リカバリを行う
リカバリは、コンピューターを工場出荷時の状態に戻す方法です。これは、ソフトウェアの問題が原因でブルースクリーンが発生している場合に有効な対処法ですが、すべてのデータとインストールしたプログラムが失われるため、最後の手段として考えるべきです。
リカバリを行う前に、以下の点に注意してください。
- 重要なデータは必ずバックアップを取ってください。
- インストールしているソフトウェアのライセンス情報やインストールメディアを確認してください。
- リカバリ後に必要となるドライバーやアップデートファイルを準備してください。
Windows 10でリカバリを行う基本的な手順は以下の通りです。
- 「設定」アプリを開き、「更新とセキュリティ」を選択します。
- 左側のメニューから「回復」を選択します。
- 「このPCを初期状態に戻す」セクションで「開始する」をクリックします。
- 「すべて削除する」または「個人用ファイルを保持する」を選択します。
- 画面の指示に従ってリカバリプロセスを完了します。
リカバリは時間がかかり、すべてのデータとプログラムが失われる可能性があるため、他の方法で解決できない場合にのみ実行してください。
更新プログラムのアンインストール
Windows更新プログラムは、システムのセキュリティと安定性を向上させるために重要ですが、時として新しい更新プログラムがブルースクリーンの原因となることがあります。特に、2024年4月のCrowdStrike Falcon製品による大規模なブルースクリーン問題のように、ソフトウェアの更新が予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。最近のWindows更新後にブルースクリーンが発生するようになった場合は、以下の手順で更新プログラムをアンインストールしてみてください。
- Windowsの設定を開き、「更新とセキュリティ」を選択します。
- 左側のメニューから「Windows Update」を選択し、次に「更新履歴を表示」をクリックします。
- ページ上部の「更新プログラムのアンインストール」をクリックします。
- 最近インストールされた更新プログラムのリストが表示されます。問題が発生し始めた日付以降にインストールされた更新プログラムを特定します。
- 該当する更新プログラムを選択し、「アンインストール」をクリックします。
- コンピューターを再起動し、問題が解決したかどうかを確認します。
更新プログラムをアンインストールした後、問題が解決した場合は、Microsoft社やソフトウェア開発元が修正版の更新プログラムをリリースするまで、自動更新を一時的に停止することを検討してください。ただし、セキュリティ上のリスクが高まる可能性があるため、長期間の停止は避けるべきです。また、問題の原因となった更新プログラムが特定できた場合は、Microsoft社のサポートページやコミュニティフォーラムで、その更新プログラムに関する既知の問題や対処法が報告されていないか確認することをお勧めします。
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