SQLインジェクションは、昨今のサイバー攻撃の中でも特に警戒が必要な脅威の一つです。
データベースを標的としたこの攻撃は、Webアプリケーションのセキュリティ上の弱点を突き、不正なSQLコマンドを実行することで機密情報の流出やデータの改ざんなど、深刻な被害を引き起こす可能性があります。
本記事では、SQLインジェクションの基本的な仕組みから、実際の被害事例、そして、これらの攻撃から私たちのデータを守るための効果的な対策方法についてわかりやすく解説します。
SQLインジェクションとは?
SQLインジェクションは、セキュリティ上の脆弱性を悪用して、悪意のあるSQLクエリをデータベースに対して実行する攻撃手法です。この攻撃はWebアプリケーションに対して不正なデータを送信することで、データベースから機密情報を抽出したり、データを改ざん・破壊したりすることを可能にします。
SQLインジェクションの攻撃の流れ
攻撃者はまず、Webアプリケーションの入力フォームなどに特別なSQLコマンドを入力します。この入力が適切にフィルタリングやサニタイジングされていない場合、不正なSQL文がデータベースに送信され、実行されます。これにより、データベースの内容が漏洩するか、改ざんされるリスクが生じます。
SQLインジェクションの仕組み
SQLインジェクション攻撃は、Webアプリケーションの入力フィールドに、データベースに対するSQLクエリを挿入することで行われます。
例えば、ユーザー名やパスワードの入力フィールドに、データベースを操作するためのSQLコマンドを挿入することで、認証を回避したり、データベースから情報を抽出したりします。攻撃者はこの方法を使い、データベースに保存されている機密情報を盗み出したり、データベースを破壊したりすることが可能です。
SQLインジェクションの想定される被害
SQLインジェクション攻撃によって、企業や個人が多大な被害を受ける可能性があります。
情報漏洩
不正なSQL文によってデータベースから機密情報が抜き取られることがあります。これにより、ユーザーのログイン情報、クレジットカード情報、社内の機密データなどが漏洩するリスクがあります。
WEBサイトの改ざん
SQLインジェクション攻撃によって、Webサイトの内容が第三者によって改ざんされる可能性があります。これにより、企業のブランドイメージや信頼性が損なわれるだけでなく、訪問者に対して誤った情報を提供するリスクが生じます。さらに、改ざんされたサイトがマルウェアの拡散に利用されるケースもあります。
SQLインジェクションへの対策方法
SQLインジェクション攻撃を防ぐためには、いくつかの対策を講じる必要があります。
エスケープ処理・サニタイジングの実施
エスケープ処理やサニタイジングを通じて、特別な意味を持つ文字や記号を安全な形に変換します。これにより、攻撃者が不正なSQL文を送っても、攻撃を無効化できます。
入力値の制限
フォームに入力できる文字列を制限することで、SQLインジェクションを防げます。例えば、英数字のみを許可するなど、入力値を適切に制限します。
入力値を変数に格納する(プレースホルダの利用)
プレースホルダを使用して、ユーザーからの入力を安全に処理します。これにより、不正なSQL文による攻撃を防ぐことができます。
データベースサーバのログを監視・解析する
データベースサーバのログを定期的に監視し、不審な活動を早期に発見します。
データベースのアカウント権限の整理
データベースに対するアクセス権限を厳格に管理し、不正アクセスを防ぎます。
IPSやWAFの導入
侵入防止システム(IPS)やWebアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入し、高度なセキュリティ対策を実施します。
SQLインジェクションの脆弱性を悪用した有名な攻撃
SQLインジェクションの脆弱性を悪用した攻撃は数多く報告されており、いくつかの有名な事例が存在します。
矢野経済研究所-約10万件の情報流出
2022年6月、同社が取引先からの問い合わせによりSQLインジェクションによる不正アクセスを受けていることが判明。対応として同社サイトと関連するサイトを閉鎖し外部ネットワークから遮断した。
本件、SQLインジェクション攻撃を受け約10万件の情報が流出した可能性があるとのこと。
引用:不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ
フエルモール-ECサイトから最大12万件の個人情報流出
2020年4月、事務用品を扱うフエルモールがSQLインジェクション攻撃により、最大で12万件の顧客情報が流出した可能性があると発表した。この中にはクレジットカード情報も含まれていたことが明らかにされている。当該サイトを閉鎖するという対応を行った。
引用:「フエルモール」への不正アクセスに関するお詫びとお知らせ
株式会社釣りビジョン-約6万件の個人情報流出
2019年1月、同社ウェブサイトに係るサーバーが何者かの不正アクセスを受け、個人情報が流出した可能性があると発表。
攻撃を受けたデータベースには、2006年以降のプレゼント応募や番組人気投票などのフォーム入力情報6万3,656件が含まれていたとのこと。
引用:不正アクセスによるお客様情報流出に関するお詫びとご報告
三菱地所・サイモン-メールマガジン会員情報約27万件流出
三菱地所・サイモン株式会社は2018年6月、同社が運営するサービス「ショッパークラブ」が受けたサイバー攻撃の詳細を発表。同社発表によると、攻撃者は脆弱性を持つウェブサイトに対して不正なコードを注入して侵入を試みる「SQLインジェクション」を用いていたことが判明。被害件数が合計約27万件、同社の保有する情報の漏洩が確定したとのこと。
引用:ショッパークラブ会員情報の流出に関する調査結果のご報告
これらの事例から、SQLインジェクションは非常に深刻な脅威であることがわかります。攻撃が成功すれば、企業は莫大な金銭的損失や信頼の失墜に直面する可能性があり、個人情報の流出によるプライバシー侵害や詐欺のリスクが高まります。これらの被害を防ぐためには、企業や組織はSQLインジェクションに対する理解を深め、適切な対策を講じることが重要です。これには、プログラミングのベストプラクティスの遵守、セキュリティ対策の強化、定期的なセキュリティオーディットの実施が含まれます。
SQLインジェクションは、Webアプリケーションのセキュリティを脅かす深刻な問題です。しかし、適切な知識と対策を持っていれば、これらの攻撃から自身を守ることが可能です。企業や個人は、この脅威を真剣に捉え、必要な対策を講じることが求められます。
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