サイバー攻撃の脅威が世界的に高まる中、日本政府は7月1日、国のサイバーセキュリティ政策の新たな司令塔となる「国家サイバー統括室」を内閣官房に発足させた。
これまでの組織を大幅に強化し、総理大臣をトップとする新体制のもとに攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入を本格化。
国民生活の安全確保を目指すとされている。
これまで日本のサイバーセキュリティ対策は、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が中心となって担ってきた。
しかし昨今、国家の重要インフラを狙った攻撃や情報窃取を目的とするスパイ活動など、サイバー空間の脅威は年々巧妙かつ深刻になっている状況である。
こうした事態に対応するため、政府は従来の「攻撃を受けてから守る」体制から一歩踏み出し、「攻撃の兆候を察知し、先回りして無害化する」ための法整備を進められてきた。
この能動的サイバー防御を効果的に実行する強力な司令塔として、NISCを改組する形で「国家サイバー統括室」が誕生している。
新組織「国家サイバー統括室」の役割
新設された国家サイバー統括室は、日本のサイバー防衛における中核を担うこととなる。
主な役割は以下の通り。
・強力な司令塔機能
これまで官房長官が本部長だった「サイバーセキュリティ戦略本部」は、総理大臣を本部長とし、全閣僚が参加する最高意思決定機関に格上げ。
国家サイバー統括室はその事務局として、政府全体のサイバー対策を一元的に指揮・調整する。
トップには、新設された事務次官級の「内閣サイバー官」が就任している。
・能動的サイバー防御の推進
最大の目玉である能動的サイバー防御を具体的に進行。
例えば、サイバー攻撃を仕掛けてくる海外のサーバーなどを特定し、警察や自衛隊が事前にアクセスして無力化する措置の総合調整を行う。
・重要インフラの防護強化
電気、ガス、水道、金融、医療、交通といった「重要インフラ」を守るため、事業者との連携を強化。
攻撃の恐れがある場合、事業者と結んだ協定に基づき通信情報を取得・監視し、脅威の芽を早期に摘み取る取り組みも進められるとのことで、今後は分野横断的な新しい安全基準の策定も予定されている。
・国内外からの情報収集と分析
国内外の政府機関やセキュリティ専門機関、企業などと緊密に連携し、サイバー攻撃に関する情報を幅広く収集・分析。
得られた知見は、政府機関だけでなく、企業や国民一人ひとりにも注意喚起として提供され、社会全体の防御力向上につなげるとされている。
平デジタル大臣は、「関係府省庁と連携し、司令塔としての機能をしっかり果たすことを期待したい」と述べ、新組織が中心的な役割を担うことへの期待感を示している。
また、政府は年内に新たな「サイバーセキュリティ戦略」を策定する方針。
【参考記事】
https://www.nisc.go.jp/