一般社団法人 「児童生徒のデータプライバシー協会」は、2025年以降にピークを迎えるGIGAスクール端末の処分に関し、全国の教育委員会を対象に実施した「GIGAスクール端末処分に関する実態調査」の第1弾結果を発表した。
同協会は、2025年1月31日に東京都渋谷区で設立され、GIGAスクール構想に基づき全国の小中学校に配備された学習用端末の更新・処分に伴う、児童生徒の個人情報保護を目的としている。
同調査は、全国1787自治体の教育委員会を対象に、2024年4月末から5月上旬にかけて郵送配布・FAX回収により行われ、104件の有効回答を得た。
調査からは、データ消去の方法、履行確認、費用確保の各面で多くの課題が浮き彫りとなり、データ漏洩リスクへの懸念が示されている。
データ消去方法に約4分の1が「適正とは言えない方法」を選択
調査によると、データ消去方法について、「初期化・リセット」(19.2%)や「磁気消去」(3.8%)といった、同協会が「適正とは言えない」と指摘する方法を選択している教育委員会が合わせて23%に上った。
これらの方法は、データが完全に消去されず復元される可能性があるとされている。
さらに、通電不可時などに限定されるべき「物理破壊」(20.2%)を含めると、全体の約4割がこれらの方法に該当するという。
一方で、最も安全とされる「専用ソフトウェアを用いたデータ消去」を選択した教育委員会は12.5%にとどまっており、適切なデータ消去に関する情報が周知されず、不完全なまま処分が進む恐れがあると警鐘を鳴らしている。
3分の1以上が作業ログ取得できない方法を検討
データ消去の履行確認方法については、37.5%の教育委員会が「消去証明書を委託事業者から取得(資産管理番号が区別できない証明書)」と回答。
これは、個々の端末の消去作業ログが確認できない方法となる。
一方、「消去証明書または消去ソフトのログを委託事業者から取得(資産管理番号が区別できる証明書)」と回答したのは20.2%だった。
文部科学省が2024年1月に改訂した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」では、専用ソフトウェアを用いたデータ消去を規定しており、これにより1台ごとの消去ログや証明書の発行が可能になる。
同協会は、1台ごとの消去ログが取れる適正なデータ消去作業の実施を求めている。
外部委託予算確保は3割以下
データ消去の工数・費用確保に関しては、「データ消去作業を外部委託する予算を確保している」教育委員会は28.8%と、3分の1以下にとどまる。
「GIGA2.0の調達価格に、仕様として含めている」は25.0%、「データ消去作業を内部で行うために必要な自治体職員・設備・予算を確保している」は9.6%だった。
予算確保が進まない背景には、「必要な情報不足」「適正に対応できる事業者がわからない、見つからない」「予算が確保できない」といった課題があると同協会は指摘。
特に予算の制約から、端末調達と処分を一括で委託するケースが多いと考えられ、教育委員会が適正な判断や運用を行うための支援体制強化が求められるとしている。
専門家からも懸念の声
全国ICT教育首長協議会の横尾俊彦会長(多久市長)は、「調査結果により見えてきたのは、『データ消去が不完全なまま処理が進む恐れ』、『GIGAスクール端末のデータ消去履行確認等が不十分な恐れ』、そして、『予算確保が十分でない場合に、適切なデータ消去がなされない恐れ』などです」とコメント。
「デジタル社会において真に心豊かな人生実現のためにICT教育の充実やデジタルリテラシー向上が大切になっており、その実現のためにもより安心安全で利用・活用のできる環境づくりも不可欠です」と述べ、調査結果を参考に適切な対応を求めている。
児童生徒のデータプライバシー協会は、「データ漏えいを1件も起こさない処分」の実現に向け、全国の自治体がGIGAスクール端末の処分とデータ消去に関する正しい認識を持ち、適正な予算を確保し、安心・安全な端末処分を実現することを目標とする。
今後は、調査の第2弾として「教育委員会の意識/課題」に関する結果を発表する予定だという。