インターネットは私たちの生活に欠かせないものとなっていますが、それに伴いサイバー攻撃の脅威も増大しています。特にDDoS攻撃はその手法の巧妙さと被害の範囲において、多くの企業や組織にとって深刻な問題となっています。インターネットサービスの中断は、企業の信頼性低下や経済的損失に直結するため、対策の必要性は日に日に高まっています。

この記事では、DDoS攻撃によって実際にどのような被害が発生したのか、そしてそれに対抗するためにどのような対策が講じられているのかを具体的な事例を交えながら解説します。

DDoS攻撃とは

DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃は、多数のコンピュータを使用してターゲットのサーバやネットワークに大量のトラフィックを送り、正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃です。攻撃者は、マルウェアに感染させた多くの「ボット」(自動化されたソフトウェア)を利用して、一つのシステムに同時にアクセスを試み、そのシステムが処理できる量を超えるリクエストで溢れさせます。結果として、正規のユーザーがサービスを利用できなくなることがあります。

DDoS攻撃の目的

DDoS攻撃の目的は多様で、単にサービスを停止させることを越えた複雑な意図が存在します。攻撃者は技術的な挑戦から政治的動機、金銭的利益追求まで、さまざまな理由でDDoS攻撃を行います。ここではDDoS攻撃の背後にある主な目的とその背景を深掘りして解説します。

経済的利益の追求

最も一般的な動機の一つは、経済的利益の追求です。攻撃者は企業や組織を標的にし、サービスを停止させることで直接的な損害を与えます。その後、攻撃を中止する見返りとして身代金を要求することがあります。この種の攻撃は「ランサムDDoS攻撃」と呼ばれ、企業にとって重大な脅威となっています。身代金の支払いが行われることで、攻撃者は資金を手に入れ、さらなる攻撃のための資源を確保することが可能になります。

政治的、社会的メッセージの発信

DDoS攻撃は政治的、社会的なメッセージを世界に向けて発信するために利用されることもあります。特定の政府機関や企業、団体を攻撃することで、その組織の政策や活動に対する不満や抗議の意志を示すことが目的です。このタイプの攻撃は、通常、政治的活動家やハクティビストによって行われ、社会に対する警鐘や変革を促すための手段として使用されます。

競合他社への妨害

ビジネスの競争環境において、一部の企業や個人は不正な手段に訴えることがあります。競合他社のオンラインサービスをDDoS攻撃で停止させることで、その企業の市場における立場を弱体化させ、自社の利益を増やすことが目的です。この攻撃は、競合企業への信頼性を損ない、顧客を自社に引きつけるために利用されます。

技術的挑戦と認知の獲得

あるケースでは、DDoS攻撃は単なる技術的な挑戦や攻撃者自身のスキルを誇示する手段として行われます。サイバーセキュリティの専門家や研究者が、攻撃技術の限界をテストする目的で実施することもあります。また、サイバー犯罪コミュニティ内での地位向上や、同じく攻撃能力を誇示する目的で行われることもあります。攻撃者は、社会的、政治的、経済的な動機とは無関係に行動し、純粋に技術的な挑戦を楽しむ傾向があります。

サイバー戦争の一環として

国家が支援するサイバー攻撃の一環としてDDoS攻撃が利用される場合もあります。これらはサイバー戦争の手段として、他国の重要インフラや通信システムを標的にして行われることがあります。国家間の対立や軍事的緊張が高まる中で、DDoS攻撃は対象国に経済的、社会的な混乱を引き起こすために使用されることがあります。

DDoS攻撃の実際の被害事例

国内でも数多くのDDoS攻撃の事例が報告されています。以下では実際に起きた被害事例をいくつかご紹介します。

発生日付企業名概要
2023年4月AtCoder株式会社
※参照:同社HP
2023年4月ごろから、同社の運営するatcoder.jpを標的としたDDoS攻撃を受けました。それによる防ぎきれないトラフィックにより、通常のユーザにも影響が発生し、障害となった。
2024年1月モイ株式会社
ツイキャス
※参照:同社HP
同社が提供するライブ配信サービス「ツイキャス」にて2024年1月30日からサーバーに対して大規模なDDoS攻撃が断続的に行われていることを確認。下記のような事象が発生した。
・「おすすめ」欄が表示されにくくなる
・ライブ配信を視聴しづらくなる
・サービスの各ページへアクセスしづらくなる
・アイテムの反映遅延、利用できない
・コメントの反映遅延、送信できない
2024年2月横須賀市
※参照:同市HP
2月20日午後8時30分頃、外部からのDDoS攻撃が原因で同市のホームページが閲覧できなくなる障害が発生した。
本件による個人情報等の情報漏えいや、ページの改ざんはないとのこと。

※2月21日午前2時頃に復旧。

DDoS攻撃の対策方法

DDoS攻撃から組織を守るためには、綿密な対策が必要です。現代のサイバーセキュリティ環境では、攻撃者が常に新しい手法を模索しているため、対策も進化し続けなければなりません。以下に、DDoS攻撃対策のための具体的な方法を詳しく解説します。

海外IPアドレスからのアクセスを制限する

地理的IPフィルタリングの利用

サービスが特定の地域にのみ提供されている場合、その他の地域からのアクセスを制限することが有効です。地理的IPフィルタリングを通じて、不審な地域からのトラフィックを事前に遮断することで、潜在的なDDoS攻撃のリスクを軽減できます。

ブラックリストとホワイトリストの管理

信頼できる地域やIPアドレスをホワイトリストに登録し、既知の攻撃源をブラックリストに登録することでアクセス管理を強化します。これにより、正当なユーザーのアクセスは許可しつつ、不正なアクセスを効果的にブロックできます。

トラフィック分析と振る舞い検知技術

アノマリー検出システムの導入

通常のトラフィックパターンからの逸脱を検出するアノマリー検出システムを導入します。これにより、DDoS攻撃の初期段階で異常なトラフィック増加を識別し、迅速に対応することが可能になります。

振る舞いベースの分析

ネットワーク上の通常の振る舞いを学習し、それからの逸脱を検出する振る舞いベースの分析技術を利用します。これにより、パターンベースの検出では見逃されがちな新しい種類のDDoS攻撃も検出できます。

DDoS対策ソフトをはじめとしたセキュリティソフトの導入

専門のDDoS対策サービス

市場にはDDoS攻撃を特化して防御するサービスが存在します。これらのサービスは、攻撃トラフィックをリアルタイムで分析し、異常な振る舞いを検出した場合に即座に緩和措置を講じる能力を持っています。

セキュリティソフトウェアの更新とパッチの適用

セキュリティソフトウェアとシステムの定期的な更新は、新しい脆弱性に対する保護を強化します。ソフトウェアベンダーから提供されるセキュリティパッチを迅速に適用することで、攻撃者が利用可能な攻撃ベクトルを最小限に抑えます。

DDoS攻撃への対策は、単一の方法に依存するのではなく、複数の防御層を構築することが重要です。先進的な技術と適切な対策の組み合わせを通じて、DDoS攻撃による影響を最小限に抑え、組織のサイバー防衛力を強化することが可能です。

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