サイバー攻撃の手法は日々進化を続け、複雑かつ高度な技術が用いられるようになっています。その中でも「プロトタイプ汚染(Prototype Pollution)」という攻撃手法は、JavaScriptをはじめとした多くのウェブアプリケーションで利用される言語に影響を与える脆弱性です。プロトタイプ汚染は、攻撃者がオブジェクトのプロトタイプチェーンを操作することで、意図しない動作を引き起こし、アプリケーションのセキュリティを損なう攻撃手法です。本記事では、プロトタイプ汚染の仕組みや影響、さらにその対策について解説します。

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プロトタイプ汚染とは

プロトタイプ汚染とは、JavaScriptにおけるオブジェクトの特性を悪用した攻撃手法です。JavaScriptでは、オブジェクトがプロトタイプチェーンを介して他のオブジェクトを継承する特性があります。攻撃者は、このプロトタイプチェーンに悪意のあるデータを挿入することで、アプリケーションの正常な動作を妨害し、データ漏洩やコード実行などの深刻なセキュリティ問題を引き起こす可能性があります。

例えば、ユーザー入力を直接オブジェクトにマージする際に適切な検証を行わない場合、攻撃者はプロトタイプチェーンに悪意のあるプロパティを追加できます。これにより、他のオブジェクトにも影響が及び、システム全体が危険にさらされる可能性があります。

プロトタイプ汚染の仕組み

1. プロトタイプチェーンの特性

JavaScriptでは、オブジェクトはプロトタイプチェーンを通じて他のオブジェクトを継承します。この仕組みは、コードの再利用性を高めるための便利な機能ですが、攻撃者に悪用されるリスクもあります。

2. 攻撃の流れ

プロトタイプ汚染は、以下の手順で行われることが一般的です。

ユーザー入力の悪用
攻撃者は、ウェブアプリケーションのフォームやAPIエンドポイントを通じて、悪意のある入力データを送信します。

プロトタイプチェーンの操作
攻撃者は、このデータを通じてオブジェクトのプロトタイプチェーンに新しいプロパティを追加します。例えば、__proto__constructorといった特殊なプロパティを利用します。

意図しない動作の引き起こし
アプリケーションは、操作されたプロトタイプチェーンを利用して動作するため、攻撃者の意図した通りに不正な処理が行われます。これには、データの改ざんやコードの実行が含まれる場合があります。

プロトタイプ汚染のリスクと影響

1. データの改ざん

プロトタイプ汚染により、攻撃者はアプリケーションのデータを改ざんすることが可能になります。例えば、価格情報や在庫情報などの重要なデータが操作されると、ユーザーや企業に多大な損害を与える可能性があります。

2. コード実行

プロトタイプ汚染を利用して、攻撃者はサーバー上で任意のコードを実行することができます。これにより、システム全体の制御を奪われる危険性があります。

3. データ漏洩

攻撃者がプロトタイプチェーンを利用してアクセス制御を迂回することで、機密情報が漏洩する可能性があります。これには、顧客データや機密文書が含まれます。

4. システム全体の不安定化

プロトタイプ汚染による影響は、アプリケーション全体に及ぶ場合があります。これにより、予期しないエラーやシステムのダウンタイムが発生し、ビジネスに大きな損失をもたらす可能性があります。

プロトタイプ汚染の対策

プロトタイプ汚染を防ぐためには、以下の対策を講じることが重要です。

🟢ユーザー入力の検証とサニタイズ

全てのユーザー入力を検証し、信頼できないデータがプロトタイプチェーンに影響を与えないようにします。特に、__proto__constructorといった特殊なプロパティへのアクセスを制限することが推奨されます。

🟢安全なライブラリの利用

使用するライブラリやフレームワークがプロトタイプ汚染に対する保護機能を備えているか確認します。ライブラリのアップデートを定期的に行い、最新のセキュリティパッチを適用することも重要です。

🟢コードレビューとテスト

コードのレビューを徹底し、プロトタイプ汚染のリスクを引き起こす可能性がある箇所を特定します。また、セキュリティテストを実施して、既知の脆弱性を早期に発見・修正します。

🟢ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)の活用

WAFを導入することで、プロトタイプ汚染を試みる不審なリクエストを検知し、ブロックすることが可能です。

サイバー攻撃対策をするなら

未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入

サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。

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セキュリティについて従業員教育を行う

サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。

セキュリティ対策のガイドラインを策定する

効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。

また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。

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