DLLハイジャッキングは、システムが動的リンクライブラリ(DLL)をロードする際の脆弱性を利用して、不正なDLLを正規のものとして読み込ませる手法に基づいています。この巧妙な手法は、システムやネットワークに侵入し、企業の機密情報を盗むために多用されています。さらに、検知が難しく、企業のセキュリティ対策をすり抜けることが可能なため、攻撃者にとっては非常に魅力的な方法となっています。

本記事では、DLLハイジャッキングの仕組みやその影響、対策について解説します。

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DLLハイジャッキングとは?

DLLハイジャッキングは、動的リンクライブラリ(DLL)の検索順序の脆弱性を悪用するサイバー攻撃手法です。プログラムが実行時に必要なDLLをロードする際、システムは特定のディレクトリを順番に検索します。この検索順序に不備がある場合、攻撃者が意図的に配置した悪意のあるDLLが正規のDLLとして読み込まれる可能性があります。結果として、攻撃者の不正コードが実行され、システムが攻撃者に制御される状態に陥ります。

この攻撃の特筆すべき点は、システムやプログラムの動作において正規のプロセスを装うため、セキュリティツールによる検知が難しいという点です。さらに、DLLハイジャッキングは、ターゲットが特定のソフトウェアを使用している場合にのみ機能するため、攻撃がターゲットに特化したものになる傾向があります。

💡DLLハイジャッキングの基本的な仕組み

DLLハイジャッキングがどのように実行されるのか、その基本的なプロセスを以下に詳しく説明します。

  1. 悪意のあるDLLの作成
    攻撃者は、正規のDLLと同じ名前を持つ悪意のあるDLLを作成します。このDLLには、攻撃者が意図するコードや機能が埋め込まれており、ターゲットシステムで実行されることを目的としています。
  2. ターゲットディレクトリへの配置
    攻撃者は、正規のDLLが読み込まれる前に悪意のあるDLLを配置します。例えば、攻撃対象のアプリケーションと同じフォルダ内に悪意のあるDLLを置くことで、プログラムがこれを優先的に読み込むように誘導します。
  3. プログラムの実行と不正コードの実行
    ターゲットのプログラムが実行されると、システムは指定された順序でDLLを検索します。悪意のあるDLLが最初に見つかる位置にある場合、これがロードされ、不正なコードが実行されます。
  4. 攻撃の展開
    攻撃者は、悪意のあるDLLを通じて、システム操作やデータ窃取、さらなるマルウェアの配布など、様々な攻撃を展開することが可能になります。

DLLハイジャッキングのリスクと影響

🔴企業への深刻なリスク

DLLハイジャッキングが成功すると、企業や組織に以下のような深刻なリスクをもたらします。

まず、機密データの流出が挙げられます。企業が保有する顧客情報や取引情報、さらには技術的な機密が攻撃者により不正に取得されるリスクが高まります。このような情報の流出は、顧客の信頼を損ない、企業のブランド価値を大きく低下させる可能性があります。

次に、システム全体の操作権限が攻撃者に奪われるリスクがあります。攻撃者は、システムの管理権限を利用してファイルの削除や改ざん、さらにはサーバーの乗っ取りなど、さまざまな不正行為を行うことができます。このような行為により、企業の事業活動そのものが停止する危険性もあります。

さらに、企業ネットワークを通じてマルウェアが拡散する可能性も無視できません。攻撃者がDLLハイジャッキングを起点としてランサムウェアやスパイウェアを導入すると、被害がネットワーク全体に広がり、企業のセキュリティ対策を根本から揺るがす結果となります。


🔴個人ユーザーへの影響

DLLハイジャッキングは企業だけでなく、個人ユーザーにも大きな影響を与えます。例えば、家庭内ネットワークや個人デバイスが攻撃対象となった場合、データの窃取やシステムの乗っ取りといった被害が発生します。

個人ユーザーが特に注意すべきなのは、オンラインバンキングやEコマースの利用時です。これらのサービスにアクセスする際に悪意あるDLLが介在すると、クレジットカード情報や銀行口座の詳細が攻撃者に盗まれる危険性があります。また、ランサムウェア攻撃が仕掛けられた場合、重要なファイルが暗号化され、解除のために高額な金銭を要求されることもあります。

DLLハイジャッキングへの対策

🟢予防策の重要性と具体的なステップ

DLLハイジャッキングを防ぐためには、事前の予防策が最も重要です。まず、システムやアプリケーションを常に最新の状態に保つことが基本です。セキュリティパッチが適用されていないシステムは、攻撃者にとって格好の標的となるため、定期的な更新が必要不可欠です。

また、信頼できるソースからのみソフトウェアをインストールすることも重要です。不審なウェブサイトやメール経由で提供されるソフトウェアをインストールすることは避け、公式サイトや認証済みの提供元からのみダウンロードを行うべきです。

🟢技術的な防御策

技術的な防御策としては、セキュリティソフトウェアや次世代型ファイアウォールの導入が挙げられます。これらのツールは、システム内での不正なDLLのロードをリアルタイムで検知し、攻撃を未然に防ぐ役割を果たします。

さらに、開発者はアプリケーションの設計段階で絶対パスを使用してDLLをロードすることが推奨されます。この方法により、攻撃者が悪意あるDLLをロードさせる余地を大幅に削減できます。また、コード署名の適用も効果的です。署名がないDLLの使用を防ぐことで、攻撃の成功率を低下させることが可能です。

🟢社内教育とセキュリティ文化の醸成

組織全体でセキュリティ意識を高めることも、DLLハイジャッキングへの対策として非常に重要です。従業員に対してセキュリティ教育を実施し、不審なファイルやメールを開かないようにする習慣を浸透させることで、攻撃の入口を断つことができます。

特に、フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングへの対策は、DLLハイジャッキングを含む多くの攻撃手法に対する効果的な防御手段となります。

サイバー攻撃対策をするなら

未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入

サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。

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セキュリティについて従業員教育を行う

サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。

セキュリティ対策のガイドラインを策定する

効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。

また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。

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