サイバー攻撃の手口は年々巧妙化し、特に企業や組織のシステムへの不正アクセスが頻発しています。その背後には「イニシャルアクセスブローカー(Initial Access Broker: IAB)」という新しい脅威が存在します。イニシャルアクセスブローカーは、侵入経路を売買する仲介業者であり、彼らの活動はサイバー犯罪の基盤となっています。本記事では、イニシャルアクセスブローカーの概要、そこから生じるリスク、そして攻撃手法や対策について詳しく解説します。

SentinelOne 特設サイト
AIによる次世代セキュリティで、ミリ秒で自動防御を実現
AI駆動EDR「SentinelOne」
アクトはSentinelOneとMSSP契約を持つ正式パートナーかつ、国内唯一のIRパートナーです。
平常時からインシデント対応までお客さま負担をかけることなく、最高レベルのサイバーセキュリティをご提供します。

イニシャルアクセスブローカーとは

イニシャルアクセスブローカー(Initial Access Broker: IAB)とは、企業や組織のネットワークやシステムへのアクセス権を不正に取得し、それをサイバー犯罪者に売買する仲介業者です。IABは、脆弱なシステムやネットワークに侵入し、得られたアクセス情報を他の攻撃者に提供することで、サイバー攻撃の初期段階を担います。このアクセス権は、ランサムウェア攻撃やデータ窃取、内部ネットワークへの不正侵入といったさらなる攻撃に利用されます。IABの活動が増加する中で、企業は従来のセキュリティ対策だけでは不十分であるといえるでしょう。

  📚[関連記事] 犯罪組織向けビジネスモデル「RaaS(Ransomware as a Service)」とは?概要を解説

イニシャルアクセスブローカーがもたらすリスク

🔴情報漏洩リスク

IABの活動によって、企業のシステムに不正アクセスされた場合、最も直接的なリスクは情報漏洩です。IABが提供するアクセス情報をもとに、攻撃者は企業の機密情報や顧客データ、財務データなどを不正に入手し、これを外部に流出させたり販売したりします。特に、金融機関や医療機関などのセンシティブな情報を扱う企業にとっては、情報漏洩が信用の喪失につながり、重大な影響を及ぼします。

🔴ランサムウェア被害の拡大

IABが提供するアクセス情報は、ランサムウェア攻撃の足掛かりとして利用されるケースが多くあります。攻撃者はIABから購入したアクセス権を使い、組織内のシステムにランサムウェアをインストールしてデータを暗号化し、身代金の支払いを要求します。ランサムウェア被害が発生すると、企業は業務停止や金銭的損失を被るだけでなく、復旧までに多大なコストと時間を要します。こうした被害が拡大する中で、IABが間接的にランサムウェア拡散の一因となっている点は見逃せません。

🔴継続的な不正アクセス

IABが提供するアクセス権は、単発の攻撃だけでなく、長期的な不正アクセスの入り口としても利用されます。攻撃者は一度購入したアクセス権を維持し、定期的にシステムへアクセスすることで、継続的に情報収集を行う可能性があります。この場合、企業は気づかぬうちに長期間にわたって情報を漏洩し続けるリスクがあるため、非常に厄介です。

イニシャルアクセスブローカーを使った主な攻撃手法

🔴フィッシング攻撃

フィッシング攻撃は、IABがアクセス権を得るために利用する主な手法の一つです。攻撃者は従業員に巧妙なフィッシングメールを送信し、リンクをクリックさせたり、悪意あるファイルをダウンロードさせたりすることで、認証情報を取得します。取得した認証情報を基にIABがシステムに侵入し、アクセス権を販売する仕組みです。フィッシング攻撃は、企業の従業員教育やメールフィルタリングである程度防げるため、企業にとって重要な対策ポイントです。

🔴マルウェアの配布

イニシャルアクセスブローカーは、マルウェアを利用してシステムへのアクセス権を取得することがよくあります。たとえば、スパイウェアやキーロガーを用いてユーザーの認証情報を盗み出し、それを基にシステムに侵入します。IABはこのアクセス権を他のサイバー犯罪者に売却し、さまざまな攻撃を可能にします。マルウェアの配布には、メールの添付ファイルや悪意のあるウェブサイトが利用されるため、企業は対策としてファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入が重要です。

🔴リモートデスクトッププロトコル(RDP)の悪用

リモートデスクトッププロトコル(RDP)は、遠隔操作に利用される便利なプロトコルですが、これを悪用してシステムに侵入するケースが増えています。IABは、RDPを使用してネットワークへのアクセス権を取得し、これをサイバー犯罪者に販売します。RDPは特にランサムウェア攻撃の前段階で悪用されることが多く、認証情報が盗まれた場合には、攻撃者が内部ネットワークに自由にアクセスできる状態が続きます。企業はRDPの利用を制限し、アクセス管理を強化することが求められます。

アクセスブローカーへの対策

🟢効果的なセキュリティポリシーの導入

アクセスブローカーからの脅威に対抗するためには、明確なセキュリティポリシーの導入が不可欠です。ポリシーには、システムへのアクセス管理の厳格化や、認証情報の管理方法の見直しなどが含まれます。アクセス制限を設定することで、不正アクセスを防ぎ、万が一侵入されても被害を最小限に抑えられます。組織全体でポリシーを周知し、適切に運用することで、アクセスブローカーの攻撃を抑制できます。

🟢多要素認証の重要性

多要素認証(MFA)は、不正アクセスのリスクを大幅に減少させる有効な手段です。IABが侵入に利用する認証情報を悪用されないよう、MFAを導入することで、IDとパスワード以外の認証手段を追加し、セキュリティを強化します。たとえパスワードが漏洩しても、追加の認証が必要となるため、不正アクセスが困難になります。

🟢侵入検知システムの活用法

侵入検知システム(IDS)を活用することで、ネットワーク内での異常な動きを早期に検出し、アクセスブローカーによる不正アクセスを防ぐことが可能です。IDSは、通常とは異なるアクセスパターンを検出し、警告を出すことで、管理者が迅速に対応できるよう支援します。特に、外部からのアクセスが多いシステムではIDSの導入が効果的です。

🟢定期的なセキュリティ教育と訓練

従業員がIABの手口を理解し、防御するためのセキュリティ教育と訓練を定期的に実施することは重要です。フィッシングメールの見分け方や、不審なリンクをクリックしない意識を高めることで、企業内での脆弱性を減少させることが可能です。また、セキュリティ訓練を定期的に実施することで、従業員のセキュリティ意識が向上し、脅威の抑止につながります。

🟢リスクアセスメントと対応計画

イニシャルアクセスブローカーからのリスクを効果的に防御するためには、企業全体でリスクアセスメントを定期的に実施し、システムやネットワークの脆弱性を把握することが重要です。リスクアセスメントにより、セキュリティ対策が必要な部分や改善すべき箇所が明確になります。さらに、リスクが発見された場合の対応計画を策定し、迅速な対応を取れるようにすることで、被害を最小限に抑えることができます。特に、大規模なシステムやネットワークを運用する企業では、リスクアセスメントがリスク軽減に大いに役立ちます。

サイバー攻撃対策をするなら

未知の攻撃にも対応できるセキュリティツールの導入

サイバー攻撃に対処するためには、最新のセキュリティツールの導入が不可欠です。特に、ランサムウェアやゼロデイ攻撃に対しては、従来のウイルス対策ソフトでは不十分であり、AIを活用したEDR(Endpoint Detection and Response)や次世代ファイアウォールの導入が効果的です。これらのツールは、未知の脅威にも迅速に対応でき、攻撃が発生する前にシステムを保護することが可能です。

SentinelOne 特設サイト
AIによる次世代セキュリティで、ミリ秒で自動防御を実現
AI駆動EDR「SentinelOne」
アクトはSentinelOneとMSSP契約を持つ正式パートナーかつ、国内唯一のIRパートナーです。
平常時からインシデント対応までお客さま負担をかけることなく、最高レベルのサイバーセキュリティをご提供します。

セキュリティについて従業員教育を行う

サイバー攻撃対策を効果的に実行するためには、技術的なツールの導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や不正な操作によって引き起こされるケースが少なくありません。特に、フィッシングメールや悪意のあるリンクをクリックしてしまうことによる情報漏えいは防止可能なものです。定期的なセキュリティ研修やシミュレーションを行うことで、従業員が最新の攻撃手法を理解し、適切な対応を取れるようになります。

セキュリティ対策のガイドラインを策定する

効果的なセキュリティ対策を実施するためには、企業ごとに具体的なセキュリティガイドラインを策定することが求められます。このガイドラインでは、データの取扱い方法、アクセス権の設定、アプリケーションの使用制限など、業務に関連するセキュリティポリシーを明確に定義します。従業員が守るべきセキュリティ基準を文書化することで、全員が一貫したセキュリティ対策を実施できる環境を構築します。

また、ガイドラインを定期的に見直し、最新のサイバー攻撃手法に対応するために必要な変更を加えることも重要です。企業の業務内容や使用する技術の変化に応じて、適切にセキュリティポリシーを更新することで、サイバー攻撃に対する防御力を維持できます。

SentinelOneに関する詳細は下記バナーから特設サイトへ

Sentinelone