近年、サイバー空間における特殊詐欺が急増し、個人や企業に深刻な被害をもたらしています。特殊詐欺は、従来の対面式の詐欺行為から、インターネットやデジタル技術を駆使した巧妙な手口へと進化しており、サイバーセキュリティの観点からも重大な脅威となっています。本記事では、特殊詐欺の定義や手口を詳しく解説するとともに、サイバーセキュリティの視点から、被害を防ぐための具体的な対策方法を紹介します。

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特殊詐欺とは?

特殊詐欺とは、電話やインターネットなどの通信手段を利用して、対面することなく相手をだまし、金銭や財産を不正に取得する犯罪行為を指します。サイバーセキュリティの観点から特に重要な問題となっています。これらの詐欺は、個人情報の窃取、フィッシング、マルウェアの配布など、高度な技術を駆使して行われることが多く、被害の規模も従来の詐欺とは比較にならないほど大きくなる可能性があります。特殊詐欺の特徴として、匿名性が高く、国境を越えて行われることが多いため、捜査や被害回復が困難であることが挙げられます。また、AIやディープフェイク技術の発展により、さらに巧妙化していることも大きな懸念事項です。

特殊詐欺の主な手口

フィッシング詐欺

フィッシング詐欺は、サイバーセキュリティ上最も一般的かつ危険な脅威の一つです。攻撃者は、信頼できる組織や企業を装ったメールやウェブサイトを通じて、ユーザーの個人情報やログイン認証情報を盗み取ろうとします。最新のフィッシング手法では、AIを活用して極めて精巧な偽装を行い、専門家でさえ見分けるのが困難なケースも増えています。例えば、銀行やクレジットカード会社を装ったメールで、アカウントの緊急確認を求め、偽のログインページに誘導するといった手口が典型的です。対策としては、メールの送信元アドレスを慎重に確認すること、URLを直接入力してアクセスすること、多要素認証を導入することなどが挙げられます。また、最新のフィッシング対策ツールやAI搭載のセキュリティソフトの利用も効果的です。

なりすまし詐欺(ビジネスメール詐欺)

なりすまし詐欺、特にビジネスメール詐欺(BEC)は、サイバーセキュリティにおいて急速に増加している脅威です。攻撃者は、企業の経営者や取引先になりすまし、従業員や財務部門に対して緊急の送金や機密情報の提供を要求します。この手法は、高度なソーシャルエンジニアリングを用いており、技術的な防御策を迂回して人間の判断ミスを誘発します。最新のBEC攻撃では、AIを活用して経営者の話し方や文体を模倣したり、ディープフェイク技術で音声や動画を偽造したりするケースも報告されています。対策としては、送金や機密情報の提供に関する厳格な承認プロセスの導入、従業員への定期的な教育訓練、電子メールの真正性を確認するためのDKIMやSPFなどの技術の導入が重要です。また、不自然な緊急性や普段と異なる要求には特に注意を払い、電話やビデオ通話で直接確認するなど、複数の連絡手段を用いて検証することが効果的です。

振り込め詐欺(オレオレ詐欺)

オレオレ詐欺は、特殊詐欺の中でも最も古典的かつ依然として被害が多い手口の一つです。犯人は、息子や孫などの親族を装って電話をかけ、「事故を起こした」「会社の金を使い込んでしまった」などと急な金銭の要求をします。最近では、AIを使った音声合成技術により、家族の声を精巧に模倣するケースも報告されており、より巧妙化しています。対策としては、突然の金銭要求には即座に応じず、必ず別の連絡手段で本人や家族に確認することが重要です。また、家族間で合言葉を決めておくなど、本人確認の仕組みを事前に整えておくことも効果的です。高齢者を狙うケースが多いため、地域や家族ぐるみでの見守りと啓発活動が重要です。

預貯金詐欺

横領詐欺(預貯金詐欺)は、犯人が金融機関の職員や警察官、弁護士などを装って被害者に接触し、「口座が狙われている」「不正利用されている」などと偽り、口座から金銭を引き出させる手口です。最近では、フィッシング詐欺と組み合わせて、オンラインバンキングの認証情報を盗み取り、遠隔で口座を操作するケースも増えています。対策としては、金融機関や公的機関を装った不審な電話やメールに注意すること、個人情報やパスワードを安易に教えないこと、オンラインバンキングには必ず多要素認証を設定することが重要です。また、定期的に口座の利用状況を確認し、不審な取引があれば即座に金融機関に連絡することも大切です。

還付金・保険金詐欺

還付金・保険金詐欺は預貯金詐欺と同じように、犯人が行政機関や保険会社の職員を装って被害者に接触し、「還付金がある」「保険金が受け取れる」などと偽って、ATMでの操作を誘導し、実際には犯人の口座に送金させる手口です。最近では、フィッシングメールやSMSを使って、偽の還付金受取サイトに誘導するケースも増えています。この手法は、特に高齢者を狙ったものが多く、デジタルリテラシーの低さを悪用しています。対策としては、行政機関や保険会社からの突然の連絡には慎重に対応すること、ATMでの還付金受け取りは存在しないことを認識すること、不審なサイトでの個人情報入力を避けることが重要です。また、家族や地域でのコミュニケーションを密にし、このような詐欺の手口について情報共有することも効果的です。

これらの特殊詐欺手口は、それぞれが独立して行われるだけでなく、複数の手法を組み合わせたり、サイバー攻撃と従来型の詐欺を融合させたりするなど、より複雑化・巧妙化しています。そのため、技術的な対策と人的な対策を組み合わせた総合的なアプローチが不可欠です。

特殊詐欺から身を守るための対策

強力なパスワード管理と多要素認証の導入

強力なパスワード管理と多要素認証(MFA)の導入は、特殊詐欺対策の基本中の基本です。サイバーセキュリティの観点から、これらの対策は個人情報や機密データを保護する最前線の防御となります。強力なパスワードとは、長さ(最低16文字以上)、複雑さ(大文字、小文字、数字、特殊文字の組み合わせ)、そして一意性(アカウントごとに異なるパスワード)を兼ね備えたものを指します。しかし、人間の記憶力には限界があるため、パスワードマネージャーの使用が強く推奨されます。パスワードマネージャーは、強力な暗号化技術を用いて全てのパスワードを安全に保管し、必要に応じて自動生成や自動入力を行います。

多要素認証は、「知っているもの」(パスワード)、「持っているもの」(スマートフォンなど)、「自分自身」(生体認証)の3つの要素から、2つ以上を組み合わせて認証を行う方式です。最新のMFAシステムでは、コンテキストベースの認証や継続的認証など、より高度な手法が採用されています。これにより、ユーザーの行動パターンや環境の変化をリアルタイムで分析し、不正アクセスをより効果的に防止します。さらに、パスワードレス認証技術の導入も進んでおり、FIDO2規格に準拠した生体認証やハードウェアキーの使用が推奨されています。これらの技術は、フィッシング攻撃に対して極めて高い耐性を持ち、ユーザビリティも向上させます。組織レベルでは、シングルサインオン(SSO)と組み合わせたMFAの導入や、特権アクセス管理(PAM)ソリューションの実装が重要です。これにより、アカウント管理の一元化と高度なセキュリティ制御が可能になります。これらの対策を適切に実装することで、フィッシング詐欺、クレデンシャルスタッフィング、パスワードスプレー攻撃など、多くの特殊詐欺手法に対する強力な防御線を構築することができます。

不審な連絡や要求に対する警戒心の維持

特殊詐欺から身を守るためには、不審な連絡や要求に対する警戒心を常に維持することが極めて重要です。サイバーセキュリティの観点からも、この人的要素は最も重要な防御線の一つとなります。

  1. 緊急性を煽る要求への慎重な対応:
    突然の緊急な要求、特に金銭や個人情報に関するものには、即座に応じず、必ず確認を取る習慣をつける。
  2. 送信元の厳密な確認:
    メールやメッセージの送信元を常に確認し、少しでも不自然さを感じたら、別の手段で真偽を確認する。
  3. 公式チャネルの利用:
    重要な情報や取引は、公式ウェブサイトや公式アプリを直接利用し、リンクやQRコードからのアクセスは避ける。
  4. 「疑わしきは確認」の原則:
    少しでも疑問を感じたら、すぐに相談する。
  5. 定期的な注意喚起:
    最新の詐欺手口や事例について、定期的に情報収集と注意喚起を行う。

これらの方策を組織全体で実践することで、特殊詐欺に対する耐性を高め、被害を未然に防ぐことができます。また、こうした警戒心は、特殊詐欺だけでなく、様々なサイバーセキュリティ脅威に対しても有効な防御となります。

コンビニに「ダミーカード」を設置して詐欺被害を防いだケースも(記事抜粋)

このダミーカードは、「ウイルス感染除去専用」などと表示された偽の電子マネーカードで、金銭の支払いを要求されている被害者が手に取りやすいデザインになっています。同時に、コンビニの店員が不自然な購入に気づきやすくなる効果も期待されています。長野県千曲市のコンビニ店長は、このカードを持参した客への声かけがしやすくなったと評価しており、詐欺防止に役立てたいと意欲を示しています。

引用元:NHK 信州NEWS WEB「詐欺被害を防げ 「ダミーカード」を県内コンビニに設置」

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