辞書攻撃はサイバーセキュリティの脅威の中でも特に一般的な形態を指し、攻撃者があらかじめ用意されたパスワードのリスト(辞書)を使用して、ユーザーアカウントの認証を突破しようとする試みです。この攻撃方法は、個人だけでなく組織にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、辞書攻撃に関する詳細な概要から、具体的な対策に至るまでを深掘りしていきます。

辞書攻撃(ディクショナリアタック)とは

辞書攻撃は、攻撃者が「辞書」と呼ばれる一般的なパスワードのリストを用いて、総当たり攻撃を行う手法です。この「辞書」には、単純な単語やフレーズ、よく使われるパスワードが含まれており、攻撃者はこれらを試行してターゲットのアカウントにアクセスしようとします。この攻撃の危険性は、ユーザーが簡単に覚えられる単語や組み合わせをパスワードに設定する傾向にあるため、予測しやすいパスワードが多く存在することにあります。

辞書攻撃で用いられるパスワードの例

辞書攻撃によって特に突破されやすいパスワードには、以下のような特徴があります​​。

  • 一般的な名前や地名:例えば、”michael”, “london”などの人名や地名。
  • 簡単な数字の羅列や一般的なパターン:”123456″や”password”のような単純で推測しやすいパスワード。
  • ユーザー自身に関連する情報:ユーザーの誕生日や電話番号など、個人情報を基にしたパスワード。

辞書攻撃を受けた場合の想定される被害

辞書攻撃により様々な被害が発生する可能性があります。主な被害には以下のものがあります​​。

  • 個人情報や組織の機密情報の漏洩:不正アクセスによって、重要な情報が漏えいする恐れがあります。
  • クレジットカード情報の不正利用:攻撃者がクレジットカード情報を入手し、不正な取引に利用する可能性があります。
  • Webサイトの改ざん:Webサイトの管理者アカウントが乗っ取られ、サイト内容が不正に改ざんされる可能性があります。
  • サーバーやシステムの停止や破壊:攻撃者による不正アクセスが原因で、システムが停止したり、データが破壊されるリスクがあります。
  • メールやSNSアカウントの乗っ取り:SNSアカウントやメールアカウントが攻撃者によって乗っ取られ、詐欺行為などに利用される恐れがあります。

辞書攻撃に類似した攻撃も

辞書攻撃と類似する他の認証突破手法にも注意が必要です。
例えば、ブルートフォース攻撃では、すべての可能な文字列の組み合わせを試してパスワードを突破しようとします。この攻撃は時間がかかるため、パスワードの複雑さを高めることで対抗できます。

また、パスワードリスト攻撃では、以前のデータ侵害で漏洩したIDとパスワードの組み合わせを利用します。このため、異なるサービスで同じパスワードを使用しないことが重要です。

辞書攻撃の対策

これらの手法は単純なパスワードを利用することで不正アクセスを試みるため、私たちのセキュリティ態勢を見直し、強化することが求められます。次に紹介する具体的な対策により、個人や組織を守るための防壁を構築しましょう。

定期的な脆弱性診断の実施

システムやアプリケーションの脆弱性を定期的に診断し、見つかった脆弱性を速やかに修正することは、辞書攻撃を含む多くのサイバー攻撃から防御するために重要です。これにより、攻撃の突破口を最小限に抑えることができます。

多要素認証の導入

パスワードだけではなく、SMSによるコード送信やアプリによるプッシュ通知など、二つ以上の異なる認証手段を組み合わせることで、アカウントのセキュリティを大幅に向上させることができます。この多要素認証は、単一のパスワードが突破された場合でも、不正アクセスを防ぐ追加のセキュリティ層を提供します。

ログインの試行回数を制限する

アカウントへのログイン試行回数を制限することで、辞書攻撃をはじめとする総当たり攻撃の効果を大幅に低下させることが可能です。一定回数以上のログイン試行に失敗した場合、アカウントを一時的にロックするなどの措置を講じることで、攻撃者が繰り返し試行することを防ぎます。

より強力なパスワードを設定する

ランダムな文字列を利用することで、辞書攻撃に対する防御力を高めることができます。パスワードの強度は、その予測可能性に大きく依存します。ランダムな文字列、特に大文字、小文字、数字、特殊文字を組み合わせたパスワードは、攻撃者が推測するのが非常に困難です。このようなパスワードを定期的に更新することも、セキュリティを保つ上で重要な習慣となります。

セキュリティツールは常に最新の状態にする

セキュリティの基本として、ソフトウェアの更新も忘れてはなりません。セキュリティパッチの適用は、新たに発見された脆弱性を修正し、攻撃者が利用する窓口を閉じることにつながります。特に、オペレーティングシステムやアプリケーション、セキュリティソフトウェアは、常に最新の状態に保つことが求められます。

従業員のセキュリティ意識向上

最後に、教育と意識の向上も欠かせません。ユーザー自身がセキュリティリスクを理解し、強固なパスワードの使用、多要素認証の導入、定期的なセキュリティチェックの実施など、適切な対策を講じることが重要です。企業や組織では、従業員に対する定期的なセキュリティトレーニングを実施し、サイバーセキュリティに対する意識を高めるべきです。

辞書攻撃は、攻撃者が常に新たな手法を開発しているため、防御策も進化し続ける必要があります。個人ユーザーから企業、組織まで、幅広い層でセキュリティ対策を適切に実施し、情報を守る努力が求められています。

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